ED患者数は1000万人以上!

ED患者

診断の精度が上がり患者数が増えてきた

EDがわが国にどのくらいいるのか、これまで一度も正確な調査がおこなわれたことはありません。このほどようやく疫学調査がおこなわれて、わが国の正確なED患者数が判明したわけで、患者が前と比較して増加したかどうかは正確にはわかりません。

ただ、われわれは1987年に、いろいろな疾患に合併するEDの率から、患者数を算出したことがあります。糖尿病には何パーセントのEDが合併するか、骨盤内臓器のガン、たとえば直腸ガンや前立腺ガンの手術後にEDが何パーセント発生するのかが報告されているので、厚生労働省(以下、厚労省と略す)で発表されるこれらの患者数にED合併率を掛けて、ED患者数を算出してみたのです。するとED患者数は最小で2073300人、最大4160000人、平均3120000人でした。

ところが、同じ方法で1998年のED患者数を推計してみますと、最小4672300人、最大9404100人となったのです。患者数はこの10年間に二倍以上に増加していることがわかりました。

患者数で大きく変化がみられるのは、かつてEDは90パ—セント以上が心因性EDとされていましたが、最近では心因性は減り、器質性EDが増加してきたことです。

これは鑑別診断法が進歩したためで、とくに陰茎の勃起に関係する血管系(海綿体組織を含む)の検査がたいへん進歩しています。勃起は陰茎の海綿体に血液が流入して起こる現象ですので、ここに血液を送り込む、あるいはここから出ていく血管や海綿体組織自体の関与がいちばん大きいのです。その重要な血管系の検査ができるようになったことで、ED診断の精度は著しく向上することとなりました。

高齢者の増加に伴い患者数も激增

各種疾患に合併するEDのなかで、加齢に伴うEDが群を抜いて多くなっています。これは人口の急速な高齢化による高齢人口の増加を反映するもので、この傾向は今後ますます強くなると予想されます。

加齢EDの原因の多くは、加齢に伴う陰茎の血管や海綿体組織の老化と、精巣(睾能)の機能の低下に伴って男性ホルモンの分泌が低下し男性ホルモンが不足することが関与しています。

また、この年代の妻は更年期を過ぎてホルモンの関係で性欲の低下や、性的興奮があっても膣分泌液の不足からくる性交痛などがあって性交をいやがったり拒否するヶースも多く、それがきっかけでEDに陥ってしまう男性も多くいます。このほか女性からのいろいろな心理的抑制がEDの原因となっている場合もあります。

中高年層では、糖尿病や高血圧など生活習慣病の増加に伴ってEDも増加してきますし、直腸ガンや前立腺ガンといった骨盤内臓器の悪性腫瘍も増加し、その根治手術を受けた後のEDの増加もみられます。

最近は勃起に関係する神経や血管を手術の際に傷つけないような手術法(機能温存手術)も普及してEDの発生率は低下してきているのですが、なにしろ病気が悪性のため、病気の進み具合によっては生命を救うほうが先決で、神経や血管を犠牲にしなければならないこともあります。また、このような手術を受ける患者数自体が増加しているので、手術後のEDの患者数全体も増加しているわけです。

現代を反映したストレスによるED

ED患者

働き盛りの年代では職場でのストレスもあります。ことにIT革命などと呼ばれる急激な情報化によるコンビユータの導入が盛んで、中高年層ではこの流れに対応できないための、いわゆるテクノストレスによるEDが問題になっています。

これは中高年だけの問題ではありません。EDというのではありませんが、若い年齢層でもコンピュータのプログラマーの中にコンピュータ依存による人間とのコミュニケーションがうまくできなくなって、妻にまったく興味を示さないセックスレスに陥っている人が増加しています。

このほか中年層では社会的責任も重く、EDのみでなくうつ病も増加し、自殺者も急増 していることも問題になっています。

若年層では心理的原因によるEDが多く、なかでも結婚をしたもののうまく性交ができない、いわゆる新婚EDも増加しています。多くのパターンは、性知識が不足しており、性交の経験もなく、初夜にどうしてよいかわからず、焦れば焦るほど勃起せず、結局性交に失敗してしまいます。

神経質な人はこのことを深刻に思い、また妻に責められたりすることで余計に自信がなくなり、それが次の性交も失敗するのではないかという不安(予期不安)を招き、次の性交もうまくいきません。やがて何度も失敗をくり返しているうちに条件付けされて、妻と向き合うだけで必ず勃起しないという反応(条件反射)が出てしまうようになるのです。

新婚EDは離婚の原因ともなり、本人およびパートナーにとって、たいへん深刻な悩みです。

このようにEDは各年齢層にみられます。

原因がわからないEDも多い

こまでは心因性EDと器質性EDについて述べてきましたが、両方の要素が混在する混合性EDも多くみられます。

糖尿病を例にとってみますと、神経や血管等に実際に障害があるのは七割で、あとの三割は心因性EDです。糖尿病にEDが合併することはあまりにもよく知られているので、糖尿病と聞いただけでEDに陥ってしまう人も多いのです。

心臓血管系疾患に合併するEDも同様で、性行為が心臓に悪いのではないかという心配からくるEDが圧倒的に多いのです。また高血圧のための降圧薬が勃起を抑えてしまう場合もあります。

このように器質牲と心因性が混在している混合性EDがひじょうに多く、両者を明確に区別できるのはむしろ少ないのが実情です。今回のわれわれの疾患別ED調査結果をみてもそのことかよくわかります。

これからは受診する人も増える見込み

ED患者

多くのED患者のうち、実際に医療機関を訪れる患者はごく少数です。アメリカのような日本より性について開放的な国でも、実際に医療機関を訪れる患者は約15パーセントにすぎないといわれており、われわれのED調査では、日本ではED患者のわずか4.8パーセントしか医療機関を訪れていないことがわかりました。

バイアグラが発売された今日でも、別な調査によると、もしEDに陥ったら「医師に相談するか」という問いに対し、「相談に行く」と答えたのは20パーセントと報告されています。このようにED患者のほとんどは、だれにも相談できずに一人で悩んでいるわけです。

日本では患者の意識の問題もあります。とくに高齢者は年齢のせいだと諦めていたり、いい年をしてEDのことを訴えるのは恥ずかしい、こんなことを訴えたら笑われるのではないかと考える人も多く、一人で悩んでいるうちに10年もたってしまったという患者さんが実際にいます。

医療側の問題も多々あります。受診しようにもどこにEDの専門医がいるのか情報がほとんどありません。また、日本の医療機関では診療室がカーテンー枚で仕切られていて、話が周囲に筒抜けで患者のプライバシーが保たれるようにはなっていないところがほとんどです。医師の多くはEDに関心が低く、悩みを訴えても真剣に聞いてもらえないことが多いのです。

しかし、最近は、患者のQOL(quality of life:生活の質)が重要視されるようになるとともに、バイアグラが発売されてからは一般人だけでなく医師もEDにだいぶ関心が深まってきています。それにED患者はこれだけ多くなっているのです。今では、ごくありふれた疾患で、患者の意識も少しずつ変化してきて、EDのことを医師に相談するようになってきていますので、今後医療機関を訪れるED患者は、ますます増えると思われます。

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